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【リサーチ山行】南アルプス 光岳


南アルプス最南部の日本百名山へ

ガイド山行の事前リサーチで光岳へ

南アルプス最南部の光岳へ最短コースの易老渡から探査のために登ってきました。以前光岳へ登ったのはもう何年も昔のことだったので最新の状況を見るための山行となります。登山口は長野県の遠山郷の奥にある易老渡ですが、現在はその手前の芝沢ゲートまで車で入ることができます。前夜関西を出発して芝沢ゲート駐車場に着いた時間は0時半頃。平日にもかかわらず8割以上の駐車枠が埋まっていました。車中で仮眠をとり、明るくなってから出発。

芝沢ゲートから林道を歩くこと約1時間。登山口の易老渡に到着しました。この橋を渡ったらすぐに急登が始まり、標準ペースで稜線の易老岳まで休憩なしで5時間かかります。どんどん急になる斜面をばてないペースを保って等高していきます。風がなく蒸し暑い環境であっという間に汗が吹き出し、速乾性の衣服がびしょぬれとなりました。前回光岳に登頂した時は山小屋泊だったので荷物は少なかったのですが、今回はテント泊の重装備(約20kg)。正直しんどいことになるだろうと想定しての半分トレーニング山行です。

易老渡から面平まで急登の連続。出発時に3リットルの水とアクエリアス500mlを持っていましたが、面平までに水1リットルとアクエリアスがすぐになくなり、アミノバイタルも数本消費しました。今回持参した行動食のなかで意外とよかったのは男梅キャンデー。しっかりとした梅風味の飴で塩分とクエン酸がしっかりと補充されるような気がして久々はまりました。

順調にペースを維持して三角点に到着。ここまでくると稜線の易老岳まであと30分かかりません。ただ三角点を過ぎると急に道が狭くなり、短いですがロープと岩場の急登になります。ここの通過では普段使っているストックなどは収納したほうがいいでしょう。

易老渡を出発して易老岳まで休憩を含んで3時間50分。テント泊装備の割にはいいペースで登ることができました。しかし登山道は展望など見どころはまったくなく易老岳だけに疲労だけが残る等高となりました。

光岳付近の動植物

易老岳から光岳小屋を目指して稜線を歩きます。ところどころにお花が残っていて目を楽しませてくれます。三吉平に至るとニホンジカに遭遇。こんな稜線の上まできているとは、先日南アルプス芦安山岳館の資料で見ましたが、やはり南アルプスではシカが大幅に増えていて、山麓と山頂付近の大きな標高差を移動する世界的にみても珍しいシカだということです。

光岳小屋を目指して

三吉平を過ぎると岩ガレの登山道を登ります。その後道が平坦になってくると静高平の水場に至ります。近くの沢から湧き出る水はしっかりと冷えていて大変おいしい水でした。ここまで2.5リットルの水を消費していたのでその分すべて補給して先に進みます。光岳小屋はもうすぐです。

静高平周辺にはハイマツの群落があります。光岳のハイマツ群落は日本のみならず世界でも南限に分布するハイマツということで大変貴重なものです。そこからしばらく歩いて木道が見えてくると両側に小さく隆起した地形が見られます。これはアースハンモックといい、冬季の凍結と融解を繰り返すうちに構造土が形成され、そこに植物が付着したものとなります。

ついに光岳小屋に到着しました。現在の定員は20名と小規模ですが食事の提供もあり、平日でも満員の大人気の山小屋です。しかし今回私はテント泊。設営が簡単な愛用のアライテントを建てて光岳山頂を目指します。

小屋から山頂までは約10分。山頂は樹林に囲まれて展望はまったくありません。山頂から足を伸ばして光岳の山名の由来となったテカリ石まで登山道を下ります。テカリ石は石灰岩の巨大な露頭であり、今日はガスで展望はありませんでしたが、雲間からたまに明るい陽光が差し込んで光る岩というものを実感することができました。

山頂からテン場に戻って早めの夕食の準備です。安定のうまさを誇るマルタイラーメンに魚肉ソーセージをちぎり入れ、しっかりと煮込んで完成した至福の一杯を胃袋に流し込むと夕方には就寝。前夜車中泊だったので、眠りにつくと夕方5時から翌日4時まで9時間熟睡。未明に起床すると空は満点の星空でした。冬の星座のオリオン座とおおいぬ座のシリウスがひときわ美しく輝いていました。

朝焼けの富士山を眺めて下山

4時起床5時前出発で早々にテントを撤収して出発。この日の日の出時刻は5:17頃、それに間に合うように大展望のイザルガ岳の山頂を目指して歩きます。

イザルガ岳の山頂は広大そのもの。ほぼ無風の山頂で富士山のとなりから登ってくる赤い日の出をゆっくりと堪能することができました。

美しい日の出を堪能して下山にかかります。三吉平では霧を抜けて差し込む朝日が神秘的な景観を見せてくれました。この林内にはメボソムシクイのさえずりが響き、足元にはゴゼンタチバナの赤い実が鮮やかでした。

易老岳から面平を経て易老渡へ。ひたすら激しい下りが連続して昨日の登りの疲れを倍加させます。ふとしたところでスリップしやすくなるので全集中の足取りがかかせません。

易老渡からの林道沿いの川床に大きな茶色い巨岩が目につきます。これはチャートと呼ばれる岩石で何千万年も昔、赤道付近の海底に降り積もった放散虫などの遺骸が岩石となり海底プレートに運ばれて南アルプスの山上まで隆起したものです。日本の地下には大陸プレートの下に海洋プレートが潜り込み、南アルプスの隆起の原因を作っています。その隆起のスピードは年に3~4ミリ、これは世界的にみてもトップクラスの隆起スピードなのです。なお、この川は遠山川といい、聖岳を源流として天竜川に合流し太平洋に注ぎます。

林道沿いの植物図鑑

下山を完了して関西へ

芝沢ゲート駐車場に到着。自販機でコーラを購入してひとりで乾杯。帰路は遠山郷から天竜村を通過して国道418経由で豊田市へ。伊勢湾岸道と名阪国道を経て奈良へ帰還しました。

山のお土産

最近百名山バッジ収集を再開しました。百名山はすべて踏破済ですが山バッジはその半分に満たない数で、手元にないものは、あの時あそこで買っておけばなぁ~というものばかりです。しかし今後も地道に収集しようと思っています。また誕生日が近い妻のために光岳小屋で速乾性の新作Tシャツを誕生日プレゼントとして購入。普段苦労をかけているので気に入ってもらえるといいが、南アルプスの果ての山小屋でしか買えない希少性をアピールしようと思っております。

光岳ガイド山行はまだ残席アリ。募集中です!

光岳ガイド山行は9/3発、9/29発いずれも3日間で出発の予定です。この機会にチャレンジしてみようという方はぜひお問合せ下さい。今回に限りご参加者2名までの荷物運搬(おひとり1.5kgまで)を補助いたします。遠い山頂ですが登頂をしっかりとサポートいたします!

山旅ガイドサービス 井上


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